鈴木 太郎のアメリカ便り No-8


Sports Car Club of America (SCCA)

SCCJの皆さん、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく。 新年第一回のアメリカ便りはスポーツカークラブ・オブ・アメリカの話です。日本スポーツカークラブと名前は似ており、我々と同じくスポーツカーとスピード好きの人たちの集まりですが、規模、活動や運営の内容は違うというところをご紹介したいと思います。

実はこの話は2001年6月の定例運営委員会で一度発表させていただいたので、ご記憶の方もいらっしゃると思います。あれから1年半経った今、変わった状況もいくつかあるのでアップデートとして書き直したものです。

組織の概要:
SCCAは本部をカンサス州トピカ市に置くアメリカ全国規模の非営利団体である。
2001年末現在の会員数は65,000人に達する。
組織はアメリカ全国を8つの地域に分割し(Division)、それぞれをさらに細かく分けて合計109の支部(Regional Chapter)が設けられている。
組織を全国的に統括する本部(National Office)の役割はレース規則の制定、コンペティションライセンスの発給、保険や会員特典の管理など。
クラブ経営の方針の決定・指示を行うのは理事会(SCCA Board of Directors)の責任で、理事会は全国13の地区(Area)から一人ずつ指名された代表で構成されている。

クラブの歴史:
1944年 SCCAの創立。当時の会則によれば、クラブの目的は「スポーツカーの保存、スポーツカードライビングの育成、スポーツカー活動のための権威ある情報源、車とそのオーナーのためイベントの場を提供すること」とある。(註:上記「スポーツカーの保存」の意味は次の通り。創立当時メンバーの所有車には第二次大戦前のアルファ、メルセデスなどのヨーロッパ車のほかスタッツなどという懐かしい名前もあったが、アメリカの社会ではこれらの車の価値がまだ認められておらず、ましてや今のように投資の対象と考える人は皆無、従って存在してもそのうちに廃車解体の運命という車が多かったため、その救済保存がメンバーの使命とされた。MGTC、XK120など戦後のイギリス車が欧州に派遣された米軍人たちによって発見され、ブームが始まったのは50年代に入ってからのこと)
1948年 第1回のレースイベントをニューヨーク州ワトキンスグレン市街地を含むロードコースで開催。これにより愛好家の趣味的なスポーツカー保存団体から本格的なレースの組織・開催を行う専門的団体への進化の第一歩を踏み出した。
1950年 最初のロードレース用ルールブックの発刊。
1952年 第5回ワトキンスグレン・グランプリで死傷者が出る事故が発生。これによって市街地のレースは中止となりSCCAはレース活動の場を一時的に失うが、一空軍司令官の粋な計らいによって空軍戦略基地の滑走路を使って再開された。しかし戦略基地の一般市民による使用が連邦議会で問題となり、再度レース活動中止の難局を迎える。以後プライベートなレース専用サーキット建設に向けて動き出すことになる。
1960年 量産車のクラス分けの基準が、エンジン排気量ベースから車両性能ベースの方式に切り替えられた。(註:たとえば60年半ばのクラス分けで一番上Aプロダクションクラスの代表的な車が7リッターACコブラ、Bにコルベットとある中、Cにロータス・スーパーセブン(当時1.5リッター)、Dに356ポルシェ・カレラ、・・・という具合。一番下のHプロダクションにはヒーリー・スプライトがいた)
1961年 クラブポリシーの変更によって会員がプロフェッショナルレース、すなわち賞金のかかったレースに出場することが可能となった。(現実としてはプロのレーシングドライバーを会員として認めたと言うほうが正しいだろう)
1963年 最初のSCCA 主催プロ・レース、United States Road Racing Championship (USRRC)をフロリダ州デイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催。
1972年 本部を創立以来のコネティカット州ウエストポートからコロラド州エングルウッドへ移転。
1975年 23年ぶりに市街地コースを使いFormula 5000レースをカリフォルニア州ロングビーチで開催。
1993年 プロ・レース組織開催を担当するProRacing部門を100%所有子会社で営利団体のSCCA ProRacing Ltd.としてスピンオフした。
2001年 本部をカンサス州トピカに移転。

クラブ活動の現況:
アマチュア、プロフェッショナル両レベルを対象にして年間約2,000の各種モータースポーツイベントを主催している。
アマチュアレベルのイベントとしては、Club Racing(サーキットレース)、Solo 1・Solo 2と呼ばれるタイムトライアル(ジムカーナ)、及びRoad Rally・Club Rallyと呼ばれるラリー形式のレースを開催する。(註:Road RallyはSCCJが行っているような速度や距離をもとにした公道ラリー。Club RallyはWRCに代表されるスピードレース)
レースプログラムの中心的存在であるクラブレーシングでは8,000名を超えるライセンス保有会員が年間合計300のサーキットレースに参加している。全部で25のクラスがあり1年の締めくくりとして9月に各クラスの全米チャンピオンを決めるRunoffと呼ばれる大イベントが行われる。
また、レースオフィシャルの資格を持つ5,000名のライセンス保有会員がおり、アメリカ全土の主要なサーキットレースにおいて登録、車検、計時、記録、コース・パドック・ピットレーンのマーシャル、セーフティークルーなどの役割すべてを会員でこなしている。
一方プロフェッショナルなレベルでは、過去にUSRRCのほか有名なCan-Amシリーズ、Formula 5000(車両はF1に近く、エンジンは米車のプッシュロッドV8をベースとした)などのイベントを主催。現在は1966年から続くTrans-AmセダンレースシリーズやRroRallyラリーシリーズ(WRCに準ずるスピードレース)などが代表的なイベントとなっている。このほかモータースポーツ専門のテレビ局Speed Channelとタイアップして開催するSPEED World Challenge Touring Car RaceやPro Spec Racerシリーズ、Formula SCCAなどがある。
SCCA100%所有の子会社、SCCA_Enterprisesでは独自のSCCA Spec Racerと呼ばれる単座スポーツレーサー(フルボディー付、鋼管スペースフレーム、4気筒1.9リッター)の製作とメインテナンス業務を行う。当シリーズは厳格に統制されたイコールコンディションのレースで、手ごろな価格と相俟って1984年のデビュー以来760台以上の車が作られSCCA最大規模のクラスとなっている。
もうひとつの子会社であるSCCA Pro Racingではプロレース主催のほか、プロモーション、マーケティング、テレビ用プログラムの製作まで自身で行っている。
SCCAの会費は個人会員で年間55ドル、個人会員の配偶者は15ドル、家族会員が85ドルとなっている。
SCCAに関する各種詳細情報は下記のウエブサイトでアクセスできる(ただし英語のみ)。また、各支部も自身のサイトを持っており、本部のサイトにリンクしている。
http://www.scca.org

終わりに付録としてマンガを添付しました。ご存知の方も多いと思いますが、アメリカの新聞の一般紙にはコミックセクションといってマンガ専門のページが入っているのが普通です。ここに載せたのは最近の土曜版にのっていたクイズです。

本来は子供向けだと思いますが私にも結構面白く、週末の朝の数分間眼の体操に時間をかけて楽しんでいます。古臭い絵のスタイルも気に入っている理由のひとつです。問題は一見同じに見えるふたつの絵のあいだに最低6箇所違いがあってそれを言い当てなさいというものです。どうぞお試しください。

(この項終わり)


アメリカ便り・トップへ