マイレッジマラソンカー特集4
2000年マイレッジマラソンのまとめとリタイアについて。


(1)昨年までの記録
3年前の杉山氏の参加では、鉄製のシャシーでエンジンもスーパーカブそのものだったのが、昨年は90ccエンジンをベースにしてエンジンを軽量化し、自作アルミシャシーと合わせて、27kgと言う軽量化を達成しました。しかし、空気抵抗が高かったのと、スロットルのマネージメントに失敗して、120km/リットル程度の燃費しか得られませんでした。


(2)2,000年プロジェクト
昨年までのこの反省から、空気抵抗の低下と、エンジンマネージメントから考えたエンジン改造計画を作ることが大切と、結論を得ました。
前者は前面投影面積と空気抵抗係数を小さくすることです。前輪カバーまで一体にしたフルカウル構造にするか、前輪カバーを分離した構成にするかも検討しました。これについては鈴鹿の第1コーナーに合わせて、左右非対称にすることが可能なように、前輪カバーは分離しました。カウルの高さと幅はは45cm。ロードクリアランスは5cmなので、車高は50cmでした。全幅は80cmで、全長が330cmですから、極端に細長い形状と言えます。
エンジンマネージメントは以下の様に考えました。吸気行程のポンプロスを無くすように、スロットルは全開とする。全開のトルクでS字を登るにあたって、回転が上がりすぎて摩擦ロスが増えないように、ギヤ比を高速型に設定する。S字の4%坂を25km/hで登るには、全重量が70kgでは0.4馬力が必要で、7%では0.7馬力となる。ここでエンジン特性をいじらずにギヤ比だけでトルクカーブと坂を登る駆動力が交差する点が2000rpmになるように、最終減速比を6にすることにしました。


(3)リタイアについて
鈴鹿サーキットの公表されたコース図から、距離と高度を読み取り、勾配を計算しました。S字は最初の傾斜は4%で、一時的に0.5%まで落ちた後に5%と計算しました。しかし、実際には2度目の斜面の傾斜が7%以上とのことでした。これに備えて土曜日にはパドック裏の急傾斜を登れるか現場でテストを行いました。この結果、0.5%の坂でエンジンを止めずに加速し、スピードが40km/h以上なら7%を登れる可能性がある、と考えました。並行してギヤ比を低速側に変えようとしましたが、チェーンテンショナーのアームが短くてスプロケットを変更できず、高速で登坂することにました。
レース当日、残念ながら4%の後の、0.5%の坂で十分な加速ができず、7%の坂の途中でトルク不足でエンジンがストップし、リタイアとなりました。 結局、3度目の挑戦で経験不足にもかかわらず欲を出して記録を狙った設計を行い、その根拠の傾斜計算を数%間違えたのが、リタイアの根本的な原因でしょう。シャシーダイナモを準備しておきながら、時間的余裕が無くてエンジン特性曲線を持っていなかったのも原因です。


(4)今後のこと
今なら、現場で対処できた方法をいくつか挙げられます。しかし、これをクリアすると次の課題が現れたことでしょう。マイレッジマラソンは純粋に科学的です。原因と結果が明確に分かります。これが毎年500台以上のエントリーがある原因でしょう。
SCCJの皆さんも日々の分けのわからない世界を離れて、たまには分けの分かる世界に参加して見ませんか。

現在、マイレッジカーは御殿場のTOM'Sから引き取られ、次の出番を待っています。いくつかの改善と新しいアイディアをつぎ込み、再び記録に挑戦できたらと思います。





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